暗黒星雲賞のはじまり

いろいろな方から暗黒星雲賞について、どうやってこんな企画を考えたのか? と質問されることがあるので、まずはそもそもの始まりからお話ししたいと思います。

SF大会への誘い

そもそもの始まりは1990年の春、金沢で一人暮らしをしていた大学生のときに、金沢にある某お店に何回かお邪魔したときに、そこの店長から「来年、金沢でSF大会をやるんだけど。SF大会って知ってる?」と聴かれたことです。
当時は早川創元を読んでたまにSFがマガジンを読み、コミケなどには行ってましたが、SF大会は名前は知っている程度でした。暇な大学生だったので、あまり深く考えずにOKしてしまい、見事第30回日本SF大会”i-CON”のスタッフとして、実行委員会の集まりに通うようになります。その流れで1990年夏に、その年のSF大会(TOKON9)に初参加することになります。
そのころから参加している方にはわかるでしょうが、この大会があんまりにもあんまりだったもんで、大会終了後のi-CON実行委員会では、いろいろと新しいことをして、良い大会にしなければいけない、という意見が出てきました。SF大会初参加だった私はそれなりに楽しめましたが、以前の大会資料などを見ると、やはりちょっと物足りないんだろうという気がしていました。

企画名誕生

後日、みんなで考えた企画や改革のリストの中に、星雲賞のことについての項目がありました。そこには星雲賞の発表や表彰や副賞などについての案以外に、第二星雲賞というアイデアがありました。何人かで雑談しているときにそれの話題となり、最初のうちは、「去年の作品の中で最低なもの」「星雲賞を取り逃したけど、ぜひ星雲賞を取らせたかったもの」などに投票してもらうという賞にしたらどうだろう、などと賞の中身について話していましたが、そのうち賞の名前に話題が移り、いろいろと名前を出し合った中に私が出した「暗黒星雲賞」という名前が良いということになりましたが、実際に事前募集して集計したり、いざこざが起きたりすると大変ですし、過去に同じことをしようとして問題があったという噂もあり、そのまま放っておかれました。

中身決まらず

年が明けて1991年になると、私が思いついた「暗黒星雲賞」という名前だけが決まっていた第二星雲賞。だんだんとSF大会が近づいてきて忙しくなってくると、実行委員会内では実現性が乏しい企画案はどんどんと忘れ去られていってました。その中の一つである暗黒星雲賞も忘れ去られていきましたが、命名者の僕だけは、なんとか形に出来ないかと密かに考えていました。
そうは言っても、新しい賞を立ち上げようとしても大変です。なにしろ名前が決まっているだけで、どうやって決めるのかも、どういうものに賞をあげるのかも決まっていません。
最初に「決める方法」について考えることにしました。

→ 誰かが勝手に決めるよりは投票だろう。
→ でも、賞の知名度がゼロのときに事前に投票をお願いしても集まらない。
→ 当日投票なら大会当日まで宣伝も出来るし、暇な時間にちょっと書いて投票してくれるようにすれば、投票率も上がるだろう。
→ SF大会参加者の当日投票にしよう

というように投票方法についてはあっという間に決まりました。つぎに「賞の中身」ですが、こちらは大変です。ほとんどの人が誰だかわからないSF大会初心者兄ちゃんが主催ですから、下手なものを作って非難を浴びたりしたら大変です。なんせ実行委員会内で、SF大会参加者には怖い人、面倒な人がたくさんいると聞かされていましたwww。そのため賞の中身については悩みに悩む事になります。

賞の中身はなにがいいのか?
→ 最低なものにあげる。
→ SF界にまだほとんど知り合いのいない僕がやると、後でいろいろとありそう。受賞者が怖い人だったら大変。
→ 星雲賞を取らせたかったものにあげる。
→ 星雲賞発表後に投票を集めるのが大変だし、かなり票が割れそう。本家星雲賞から文句が来るかも?
→ じゃあ星雲賞と関わらないSF大会内の内輪なものにしよう。
→ 最もいい企画にあげよう。
→ いい企画の基準ってなんだ?
→ そもそも主催者みんなが頑張っている企画に優越をつけるのはやりたくないなぁ。
→ じゃあ企画以外にもいろいろなものにあげて受賞対象者を増やそうか。
→ でも結局選ぶ基準ってなんだ?

というふうに進み、結局基準は決まらないまま、SF大会が近づいてきます。

企画決定!

結局、受賞の基準については最終的な結論として、
「どういう理由で賞をあげるかを決めるのは大変」「勝手に基準を作って決めてもどこかから文句が来るだろう」
という簡単な結論に達しました。普通ならここであきらめるのですが、ここからさらに
「受賞の理由も投票する人に決めてもらおう」
という、何処から来たか自分でもわからない大胆な発想が浮かびます。これなら怒られても、責任は投票した人に行きます(?)。しかも誰が投票したか公表しなければ、投票者も安全です。
また、当時実行委員会内部では文書作成に「書院」というワープロを使用していました。一太郎しか使ったことのない私は面白がって色々と試していたら、機能の中に「表彰状作成」というものを見つけました。実際に使ってみると、フォントもきれいで全く問題ありません。これを使えば受賞者を決めるだけでなく当日中に表彰状を作って表彰までできると閃きました。
さらに当時実行委員会関係者にハンコ屋さんがいてSF大会で必要なハンコの作成を頼んでいましたので、ついでに表彰状に使えるハンコも作ってもらえることになり、現在の暗黒星雲賞の形がほぼ揃い、動き出すことになりました。
そうは言ってもメインで動くのは私一人で大会スタッフ作業もあるので、この企画を成立させるのがどれだけ大変なことかは殆どわかっていませんでした。これも、少ないSF大会参加経験と、若さの賜物でしょうか。

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